言語聴覚士 国家試験合格への道 ~サウンドスペクトログラム⑥第22回の解説
国家試験が終わってからは、抜け殻のような毎日を過ごしていました。
卒業学年はほとんど学校に来ることもなく、寂しい日々を送っています。
来年に向けて少しずつ進んでいくために、今年の国試のサウンドスペクトログラムの解説をしていきたいと思います。
今までのサウンドスペクトログラムについてはここから確認してください。
1.今年の問題
選択肢は
1.タミスレ 2.コニツエ 3.サリクメ 4.トミルネ 5.ダミシテ
まず4モーラ語という事なので、4つに割ってみたいと思います。
2.今までの過去問の知識から分析してみる
まずは3音目が分かりやすいかと思います。
低周波数が抜けていて高周波数のみという所から「摩擦音」であることが分かります。
まぎらわしいのが、選択肢の2.コニツエの3音目が「破擦音」になっています。
しかし、無音区間が全く見られていないことから破裂がおきているとは思えません。
従って選択肢2は消去できると思います。
残った選択肢は1,3,5になります。
次は1音目を見てみましょう。
0.16秒あたりから若干無声音で始まっているように見えますが、その直後からボイスバーが見えています。
はっきりと何音であるというのは言いにくいですが、選択肢3の1音目の「摩擦音」の可能性は低いと思われます。
実際に構音してみると、もう少し摩擦成分が持続している事が分かるかと思います。
そのため、選択肢3,5が残りました
母音を見てみるとホルマントは下記のようになるかと思います。
いつも出している、吉田先生(「言語聴覚士の音響学入門」)の各母音のホルマントに照らし合わせると、
1音目はF1とF2が近接していることから「あ」の可能性が高いことが分かります。
また、2音目はF1とF2がかなり離れていることから「い」の可能性が高いことが分かります。
しかし、選択肢を見てみると1,5すべて1音目「あ」→2音目「い」になっていて消去できません。
3音目は2音目の「い」に比べてF2が低くなっていることから「えorおorう」の可能性が高いと思います。
そうなると、選択肢5の3音目が「い」になっていることからこの選択肢を消去できます。
結果、答えは1になります。
(1音目ですが、語頭なので無音区間が見られなかっただけで「破裂音」でした)
3.いままでの国家試験では出なかったテクニック
4音目に注目してください。
3音目と4音目の間にほんの少しだけ無音区間が出ています。
ここだけで「無声破裂音」を選んだ方もいるかもしれません。
しかし、今までの過去問で見てきた無音区間よりも短いように感じます。
それではこの音は何かと言うと[r]のはじき音です。
実際に破裂音(例えば[t])とはじき音を構音してみましょう。
破裂音の場合無音区間が長くなるのに対し、はじき音の場合舌尖を挙上させてはじく間に少しだけ無音区間が生じていることが分かるかと思います。
今後、このような短い無音区間が見られたら「はじき音」を疑ってみるという事が分かりました。