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言語聴覚士 国家試験合格への道 ~言語学頻出問題 形態論を解こう③

前々回の記事では同一の形態素の見分け方を見ていきました。
今回は実際の国家試験の問題を見ながら、これらの考え方で本当に解けるのかを検証していきたいと思います。

*今回もですが、かなり長い記事になっております。

 時間が限られていますので、お手すきの方・形態論が苦手な方はどうぞ。

 

第18回問題44 同一形態素を含まない組み合わせはどれか。
a.愛す ―愛しい
b.教える-教わる
c.漬ける-浸かる
d.座る -据える
e.押す -惜しい
1.a,b  2.a,e  3.b,c  4.c,d  5.d,e

同一形態素を問う問題です。
a.この問題の例は1回目の記事に出しているので、この2つの組み合わせは別々の形態素であると分かるかと思います。
具体的には「愛(あい)す」と「愛(いと)しい」だと意味的には同義ですが、音的には全然違います。
また、音読みと訓読みという違いがあるため、同一の形態素ではないと言えます。
b.今までの説明だと、「同じ漢字であっても同じ形態素とは言えない!」と口を酸っぱくして言っていたので、この2つは別々の形態素ととらえてしまうかもしれません。
しかし、「教(おし)える」と「教(おそ)わる」だと、意味的にも音的にもほとんど同じであると感じます。
音と意味の2つが備わっているので、同一の形態素と言えます
c.d.の2つは漢字が違うものの同一の形態素という引っかけになります。
「漬(つ)ける」と「浸(つ)かる」だと、音的に同一のものになります。
意味はというと、どちらも「何らかの液体に入っている状態」という共通点があります。
同様に「座(すわ)る」と「据(す)える」ですが、音的にはまあ似ています。
意味的には、どちらとも「(地面)などに置く」という様な共通点があります。
(「据える」には座るという意味もあるようです)。
そのため、意味と音の両方を満たしているため、同一の形態素と言えます。
e.の「押(お)す」と「惜(お)しい」では、音的には同一と言えます。
しかし、意味的にはどうかというと、さすがにこれはどうこじつけても似たような意味とは言えないかと思います。
従ってこの組み合わせは同一の形態素とみなせません。
結果、この問題の答えは「2」になります。


続いてサクサク解説していきましょう。
第20回問題44 「長雨(ながあめ)」の「あめ」と同一の形態素の異形態であるのはどれか
a.雨合羽(あまがっぱ)
b.小雨(こさめ)
c.豪雨(ごうう)
d.五月雨(さみだれ
e.水飴(みずあめ)
1.a,b  2.a,e  3.b,c  4.c,d  5.d,e

この問題は「異形態」の問題ですが、同一の形態素かどうかが分かれば問題なく解けます。
a.b.は「雨(あめ)」という形態素が、「複合」によって「雨(あま)」や「雨(さめ)」と変化しています。
しかしこれらは、意味的には「雨」と同義ですし、「雨(あめ)」という音とも類似しています。
従ってこれらは同一の形態素の異形態と言えます。
c.は意味的には同一ですが、音読み・訓読みで異なるため同一の形態素ではありません
d.は意味は一緒であるし、音も似ていないこともないと感じられた方もいるかもしれません(雨(だれ)と雨(あめ))。
しかし、この読みは「熟字訓」と呼ばれる読み方になります。
「熟字訓」とは、「日本語において漢字からなる単語に、単字単位ではなく熟字単位で訓読み(訓)を当てたもの」になります。(Wikipediaより)
熟字訓の例として、「海老(えび)」や「無花果(いちじく)」、「灰汁(あく)」なんかがあります。
では、「海老」の「海」は「え」と読むのかと言われると、違うような気がしませんか?
どういうことかというと、元々「えび」という日本語があり、それに対して漢字の熟語(この場合「海老」)を当てただけなので、漢字ごとに読みが分解できるわけではないということです。
従って今回の「五月雨」も「雨」の部分が「だれ」と読むわけではないため、異形態とみなせないということになります。
e.は「雨」と「飴」は音は同一ですが、さすがに意味が同一とはみなせません。
従って、答えは「1」になります。

 

第17回142 言語学的にみて同音異義語はどれか
1.読む ―詠む
2.剥げる-禿げる
3.取る -採る
4.護る -守る
5.群れる-蒸れる

この問題で出てくる同音異義語」とは、「音が一緒でも意味が違う言葉」という意味になります。
選択肢を見ていくと、すべて音が一緒になります。
「音が一緒でも意味が違う1組(=同音異義語)」と「音も意味も一緒の4組(=同一の形態素)」を見分けていくという問題になります。
1.は「口に出すこと」、2は「何かが取れること」、3は「何かを手に持つこと」、4は「安全を保つこと」などの意味で一緒であることが分かります。
しかし、5については意味の共通点が見出せません。
従って、答えは「5」になります

第19回44  動詞「かえる」を表す形態素のうち類義の書き分けでないのはどれか
1.変
2.替
3.返
4.代
5.換

この問題は「かえる」という音が一緒の漢字の中で、「類義=似たような意味」の漢字ではないものを選ぶものになります。
音が一緒で「類義=似たような意味」ということは、同一の形態素と同じ意味になります。
従って、漢字の中で同一の形態素ではないものを探す問題になっています。
選択肢を見ていくと、1.2.4.5は「change」という共通の意味を担っていることが分かります。
それに対して3の「返」にはそのような意味を担っていないため、答えは「3」になります。

【まとめ】
法則に当てはめて国家試験問題の解説を行いました。
少し強引な解説だと感じた問題もあるかもしれません。
しかし、実際の国家試験には選択肢があるので、はっきりと分からない選択肢があったとしても、圧倒的に違う選択肢を選ぶことで正答に至れるのではないかと思います。

それよりもこの問題の難しいところは、選択肢の漢字の読み方が分からなかったり、意味が分からなかったりすることかもしれません。
語彙力が乏しいことで、やり方が分かっていても解けないという学生が今まで何人かいました。
この時期から語彙力を増やしていくというのは困難ではありますが、ひとまず今回解説した方法で選択肢が1つでも減らせれば幸いです。

次回は、国家試験の受験票が届く時期になりますので、国家試験当日の注意点について話をしていきたいと思います。