言語聴覚士 国家試験合格への道 サウンドスペクトログラム④
国家試験勉強も本格化し始めた今日この頃ですね。
模擬試験などの結果で一喜一憂している方もいるかもしれません。
模試の結果はともかくも、体調には十分に気を付けたうえでコツコツ勉強を続けていってくださいね。
さて、今回はサウンドスペクトログラムの母音の見方を考えていきたいと思います。
[母音のみかた]
1.母音の基本はホルマント周波数
2.実際のサウンドスペクトログラムで見てみると・・・
3.その他のテクニック
1.母音の基本はホルマント周波数
子音の見分け方では各子音の特徴を一つ一つ見ていきました。
母音はと言うと一つの見方で十分です。
それは「ホルマント周波数」を見分けることです。
ホルマント周波数とは声道で(閉管)共鳴する周波数のことです。
声道の長さや形状などによって共鳴する周波数が変化していきます。
各母音によってホルマント周波数が変わってきますので、その特徴を覚えることが大事になります。
さて、そのホルマント周波数ですが、母音の弁別に必要なのは共鳴する周波数のうち低い方から1番目2番目の周波数になります(これを第1ホルマント(F1)、第2ホルマント(F2)と言います)。
このF1,F2のパターンを覚えることが母音弁別のカギになります。
各母音のF1、F2のパターンは以下の図の通りです。
私はさらにこれを際立たせるために、こんな図で見ています。
見方としては、他の母音に比べてF1が低くてF2が高いものは「い」と判断される。
他の母音に比べてF1が高くてF2が低いものは「あ」と判断される、といった感じです。
この位置関係は子供だろうが高齢者だろうが当てはまります。
従って発話者によってF1,F2の周波数は変わってくることになります。
しかし、国家試験では「成人男性話者」と限定されています。
「成人男性話者」の場合、何も口の中で操作しない時のF1は500Hz、F2は1500Hzとなります。
もし、「成人男性話者」という国家試験の問題を見たときは、F1が大体300~800Hz辺りにあり、F2が1,000Hz~2,000Hz辺りにあると予想したうえでサウンドスペクトログラムを見ると、大体見分けることができます。
2.実際のサウンドスペクトログラムで見てみると・・・
先ほどの説明を見ると、F1、F2のパターンだけで見分けられるなら全母音見分けることが可能なんではないかと思われるかもしれません。
しかしそこまで簡単ではないというのを見ていきたいと思います。
この問題は前々回に3音目が無声破裂音であろうという事で、選択肢の2が答えであると判断された問題です。
この問題の母音部分のF1、F2を見てみると下記のようになります。
選択肢2の場合の母音は、1音目a、2音目無声化、3音目e、4音目aになっています。
先ほどの「いえあおう」で見たホルマントの位置関係の図とも合致していて問題ありません。
しかし、もし選択肢4の「まっしろ」と迷った場合はいかがでしょうか?
「まっしろ」の場合、1音目はa、2音目は子音なので無し、3音目はi、4音目はoになります。
これもありうると感じませんか?
母音の場合はF1とF2の差は、「い」と「あ」ほど離れていればともかくも、各母音の差は微妙です。
従って、F1とF2の幅の間隔を前後の母音で比較しながら、幅が広めだから「い」か「え」かなぁ、幅が狭めだから「あ」「お」かなぁ、と推定していく(選択肢を消していく)のが良いのではないかと考えています。
3.その他のテクニック
最後に簡単で、覚えておくとよいテクニックをお伝えします。
この問題を見てみると、1音目と2音目のF1とF2がつながっていることが分かります。
このような場合、(子音+)母音+母音になっていることが確定します。
母音から直接母音に移る時のみこのようにホルマント周波数がつながりますので、覚えておくといいかと思います。
ちなみにこの問題では2音目が母音の選択肢は4のみなので一瞬で答えが分かります。
次回はサウンドスペクトログラムのまとめをしていきたいと思います。