言語聴覚士 国家試験合格への道 ~言語学頻出問題 形態論を解こう②
前回の続きを書いていきたいと思います。
2週間に1回の更新だと国家試験直前になってしまうので、少し間隔を早めての更新です。
国家試験まで約1か月になりましたが、焦らず1個1個の事を覚えていっていただけたらと思います。
[言語学頻出問題 形態論を解こう②]
1.これは同一の形態素?
2.異形態とは?
3.まとめ~同一の形態素とは
1.これは同一の形態素?
前回の記事で、「剥げる」と「禿げる」は漢字が違うものの、大枠の意味が一緒なので同一の形態素であると言いました。
では、「愛(あい)する」と「愛(いと)しい」は同一の形態素でしょうか?
この場合、同じ漢字を使っているし、両方とも「大切にする」という意味であることから同一の形態素と思われるかもしれません。
しかし、この2つは同一の形態素ではありません。
なぜかと言うと、「愛(あい)」と「愛(いと)」は読み方が全然違うからです。
「愛(あい)」は訓読みで「愛(いと)」は音読みになります。
極端な言い方をすれば、これは「愛(あい)」と英語の「love」くらい形態素が違うことを表しています。
漢字が一緒であるという事は、同一の形態素を考えるうえではそこまで重要ではないといえます。
同一の形態素というためには、大枠の意味が一緒であることに加えて、(漢字が違ったとしても)読み方が一緒であることが求められるということになります。
2.異形態とは?
先ほど大枠の意味が一緒で、読み方が一緒であるものが同一の形態素と言いました。
しかし、このルールから微妙に外れる例を見ていきたいと思います。
それが「異形態」になります。
前回の記事で、自由形態素と自由形態素が2つ以上くっつくことで新しい語を作り出す「複合」のことを少しふれました。
この複合の際、形態素の読み方が変化するという現象が起きるときがあります。
(*厳密には「複合」以外の場合でも形態素の読み方の変化は見られます)
例えば、酒(さけ)+盛り=酒(さか)盛り
という形で、「酒(さけ)」という形態素が複合によって「酒(さか)」と読み方が変化しました。
これが「異形態」と呼ばれる現象です。
では、この「酒(さけ)」と「酒(さか)」は同一の形態素か?と言われると、これは同一の形態素になります。
「酒(さけ)」が「酒(さか)」と音が変化しただけなので、形態素のレベルでは変化していないと判断されます。
従って「異形態」の関係にある単語たちは同一の形態素と考えられます。
この「異形態」ですが、皆さんも知っているあの現象も「異形態」の一種です。
あの現象とは「連濁」です。
連濁とは「二つの語が結びついて一語になる(複合語)際に、後ろの語(後部要素)の語頭の清音が濁音に変化する、日本語における連音現象」(Wikipediaより)になります。
具体的には、本+棚(たな)=本棚(だな)
と棚(たな)が棚(だな)と変化しています。
これも「異形態」と同じようなことが起きているとお分かりいただけましたか。
従って「連濁」は「異形態」の中の1つのパターンとして認識していけば大丈夫です。
3.まとめ~同一の形態素とは
2回にわたって形態素の事を見ていきました。
それでは結局、同一の形態素を見分けるためにどのようなことが必要かを考えていきたいと思います。
Point①意味的に近いこと
Point①’細かい意味を追求せず、大体の意味が近ければOK
Point②音的に近いこと
Point②’漢字が一緒であっても、読み方(訓読み・音読みなど)が違う場合は×
Point②’’異形態の関係の場合は同一形態素と言える
これらを押さえておけば、これに関連した問題は解けるかと思います。
次回は実際の国家試験を見ながら、これらの解説で実際に問題が解けるかを検証していきたいと思います。