言語聴覚士 国家試験合格への道 ~言語学・音声学 アクセント解説②
気が付けばもう11月も半ばですね。
国家試験まで3カ月になり、教員として自然と力が入る時期になってきました。
悩ましいのは、学生たちはまだ真剣モードとは言えないところです。
毎年の事ではありますが、気持ちだけが空回りする日々です。
前回の続きで、アクセントについて解説していきます。
[言語学・音声学 アクセント解説②]
1.全てに共通するアクセントのルール
2.名詞アクセント
1.全てに共通するアクセントのルール
前回の記事で、言語聴覚士国家試験の問題を攻略するためには、名詞・複合名詞、動詞(形容詞)のアクセントを学ぶ必要があると言ってきました。
まずは、これらすべてに共通するルールから確認していきましょう。
①1音目と2音目の高さが必ず変わる
日本語はピッチ(高さ)アクセントと言って、音の高低でアクセントを表現します。
この音の高低ですが、必ず1音目と2音目の音の高さが変わります。
例えば一音目が高い場合、2音目は必ず低くなります。
みかん(ミカン)高低低
1音目が低い場合、2音目は必ず高くなります。
さくら(桜)低高高
このルールを知っておくことで、第16回問題138のような問題の選択肢が絞れます。
「共通語(東京方言)の4モーラ動詞終止形のアクセント型として存在しないのはどれか」
この問題の選択肢dに「高高低低」が入っています。
しかし、1音目と2音目の音の高さが異なることを知っていれば即座に消去できます。
②一度下がったら上がらない
高から低に下がる時の高の部分をアクセント核と言います。
このアクセント核ですが、1単語に1つしかないというルールがあります。
高低高低のような単語はないという事を表していますが、実はもっとルールは厳しいです。
高低のように1度下がった場合(アクセント核が見られた場合)、それ以降「高」になる事はないというルールがあります。
すなわち、高低のようなパターンが見られた場合、それ以降はずっと低になります。
ももたろう(桃太郎) 低高低低低
上記のように、高から低に一度下がったら上がることはないという事です。
ちなみに先ほど出した第16回問題138の中にも、このルールを知っていれば消去できる選択肢があります。
選択肢e「高低高低」がありますが、これは消去することができます。
2.名詞アクセント
ここからは名詞アクセントについて見ていきます。
1で見てきた、「1音目と2音目の高さが変わる」「1度下がったら上がらない」というルールは、もちろん名詞アクセントにも適用されます。
その上で名詞アクセントの注意点やルールを見ていきます。
①名詞アクセントは助詞も含めて考える
名詞アクセントを考えると、どうしても単語レベルで考えてしまいます。
しかし、重要なのは助詞も含めて考えるという事です。
例えば以下の単語を見てください。
さくら 低高高
おとこ 低高高
これだけ見ると同じアクセントパターンに見えてしまいますが、助詞をつけてみるとどうなるでしょうか。
さくら(が) 低高高(高)
おとこ(が) 低高高(低)
という形でアクセントパターンが変化します。
従って、必ず助詞をつけるという事を忘れないようにしてください。
②名詞アクセントのパターン
名詞アクセントのパターンは大きく分けると2種類あります。
アクセント核無:平板型
アクセント核有:起伏型
この起伏型はさらに3種類に分かれます。
頭高型・尾高型・中高型です。
では、これらを例とともに見ていきます。
アクセント核無:平板型 さくら(が) 低高高(高)
平板型は1音目が低から始まって2音目に高にいって、最後まで高で終わる単語になります(高から低に下がるアクセント核がありません)。
アクセント核有:起伏型(頭高型) みかん(が) 高低低(低)
頭高型は1音目が高から始まって2音目に低にいって、最後まで低で終わる単語になります。
アクセント核有:起伏型(中高型) おかし(が) 低高低(低)
中高型は1音目が低から始まって2音目に高にいって、最後の音よりも前に低になる単語になります。
アクセント核有:起伏型(尾高型) おとこ(が)低高高(低)
中高型は1音目が低から始まって2音目に高にいって、最後の音で低になる単語になります。
このパターンをしっかり覚えておいてください
*動詞(形容詞)アクセントにはこのパターンはありません。
③起こりうる名詞アクセントの数はn+1
モーラ数によってアクセントが起こりうる数が異なってきます。
2モーラ語の場合、はし(箸)が 高低低、はし(橋)が 低高低、はし(端)が 低高高のように3種類になります。
3モーラ語の場合、さくらが 低高高高、みかんが 高低低低、おかしが 低高低低、おとこが 低高高低のように4種類になります。
2モーラ語は3種類、3モーラ語は4種類となりましたが、ここから法則が見えてきます。
nモーラ語の場合、起こりうるアクセントのパターンはn+1になるという事です。
2モーラ語は3種類、3モーラ語は4種類でしたが、4モーラ語は5種類、5モーラ語は6種類になるという事です。
この法則(n+1)も覚えておいてください。
*動詞(形容詞)アクセントはこのパターンが当てはまりません