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言語聴覚士 国家試験合格への道 ~言語学頻出問題 形態論を解こう①

言語聴覚士の国家試験において、言語学の問題は悩ましいジャンルの一つではないでしょうか?
第21回では若干難易度が緩和されたようにも思われますが、毎年のように新しい用語の問題が出ており、難関科目の一つであると言えそうです。
そのような中で、毎年のように出ている問題を攻略することは国家試験合格の近道と言えます。
今回は言語学で定番の問題である、形態素の問題を解説していきたいと思います。

 

言語学頻出問題 形態論を解こう①】
1.形態素の問題とはどのような問題か?
2.形態素とは何か?
3.同一の形態素とは?

 

1.形態素の問題とはどのような問題か?
形態素の問題は毎年のように出ています。
第17回142 言語学的にみて同音異義語はどれか
第18回44  同一形態素を含まない組合せはどれか
第19回44  動詞「かえる」を表す形態素のうち類義の書き分けでないのはどれか
第20回44  「長雨(ながあめ)」の「あめ」と同一の形態素の異形態であるのはどれか
といったような形で出されています(第21回は出ていませんが、私の調べた限り第15回から6年連続で出ています。第21回も連濁の問題はあるので全く出ていないというわけではありませんが)。
パッと見ると、これらは全て別々のことを聞いているように思えますが、形態素のことが分かっていればすべて同じ手法で解ける問題になります。
今回はこのタイプの問題が解けるようになることを目指して、3回に分けて解説していきたいと思います。

(今回と次回が用語の解説で、3回目は過去問の解説をしていきます)

 

2.形態素とは何か?
形態素とは「意味を持った最小の単位」になります。
大きく2つに分けるとすれば、
単独でも使うことのできる自由形態素」(例:茶、犬、生きる)と
自由形態素とくっついて使われる「拘束形態素(例:お茶の「お」、暑さの「さ」)があります。
今回取り上げる問題は「自由形態素」に関連するものであり「拘束形態素」は関係ないので、今後は「自由形態素」のみで話を進めていきます。
さて、この「自由形態素」ですが単独で使うだけではなく、「自由形態素」同士をくっつけて新たな語を作ることができます。
これを「複合」と呼んでいます。
「複合」の例を見てみると、「茶(ちゃ)」+「椀(わん)」で「茶碗(ちゃわん)」のような現象です。
この現象も問題を解くうえで重要なので、頭に入れておいてください。

(次回、異形態や連濁などの解説で触れていきます)

 

3.同一の形態素とは?
先ほどの国家試験問題を見てみると、第18・20回で「同一の形態素という言葉が出ています。
第19回に出ている「類義」も「同一の形態素とほぼ同じ意味になります。
また、第17回の同音異義語」も「(同じ音だけど)同一の形態素ではない」とほぼ同じ意味になります。
ではこれらで出てくる「同一の形態素」とはどのようなものかを見る前に、「同一の形態素ではない」ものから見ていきたいと思います。
「犬」と「猫」は同じ形態素でしょうか?
「犬」と「猫」は全く違う意味を持つものであり、同一の形態素とは言えません。
「犬」「猫」「バナナ」「みかん」など、この世の中にあふれている「自由形態素」同士はほとんど「同一の形態素ではない」と言えます。


では、「剥(は)げる」と「禿(は)げる」はいかがでしょうか?
「剥げる」はくっついていた塗料などが取れることであり、「禿げる」は髪の毛が取れてしまうことを表します。
そもそも漢字が違うし、実際の意味も異なるため「同一の形態素ではない」と判断してしまいそうですが、実はこれは「同一の形態素」になります。
この説明をすると、学生たちは「???」となります。


これがどうして「同一の形態素」なのかというと、元々「はげる」という形態素があり、「何かにくっついていたものが取れる」という意味を担っていたと推測されます。
その意味が細分化され、物の表面に塗りつけたものが取れるのを「剥げる」とし、頭にくっついていた毛が取れるのを「禿げる」になっていったものと思われます。

元々が同じ意味であったことから、「同一の形態素」と判断されます。
言語聴覚士テキスト第2版」では、「指す」「刺す」「射す」「挿す」(すべて「さす」と読む)が「同一の形態素」として説明されていました。
これらも1個1個の厳密な意味は異なりますが、大枠の意味としては「あるものが一方から一方へと進む」という点において「同一の形態素」と判断されます。
このように漢字が違ったとしても、細かな意味が違ったとしても、大枠の意味が同じ単語の場合「同一の形態素」になるような事があります。

今回は言っていることが分かるような、分からないようなお話になってしまいました。
次回は異形態の話を含めて、同一の形態素がどのようなものかをさらに詳しく見ていきたいと思います。