言語聴覚士 国家試験合格への道 サウンドスペクトログラム③
サウンドスペクトログラムの内容も3回目になりました。
今回は残った子音を見ていきたいと思います。
[子音の見分け方②]
1.少し注意が必要な破擦音
2.見分けにくい鼻音
3.その他の子音の注意点
1.少し注意が必要な破擦音
破擦音とは「破裂音+摩擦音」になっている音のことです。
日本語の場合「ち(tɕ)」や「つ(ts)」が主です。
(他には語頭などのざ行にも見られます。詳細は https://ipa-mania.com/zoo-dzoo/ )
基本的な破擦音のサウンドスペクトログラムは前回見ていった「破裂音」と「摩擦音」の合成になります。
最初に「破裂音」が来てから「摩擦音」が来るだけです。
しかし、語頭の無声破擦音は少し注意が必要です。
語頭の無声破擦音の場合、どこから閉鎖区間(無音区間)が始まっているか分からず、無声摩擦音のみに見えてしまうという特徴があります。
前回も出した第18回140番の問題を見てみると、
1音目が無声摩擦音のように見えます(青枠内)。
前回無声破裂音で「3しんこく」と「4ついたて」に絞りましたが、1音目が無声摩擦音だと思って「3しんこく」に飛びついてしまうと罠に引っかかるはめになります。
「4ついたて」の1音目は無声破擦音であり、1音目であることを考えると、この段階では3と4の選択肢を削除することは困難です。
2.見分けにくい鼻音
鼻音は日本語でいうとナ行(n)マ行(m)撥音(N)などです。
声道が口腔に加えて鼻腔も入るため、アンチフォルマント(反共鳴周波数:国家試験的にとても重要な用語)がみられるという特徴があります。
専門的な説明は私には不可能なので、参考文献にしている「言語聴覚士の音響学入門」(吉田友敬先生)p.151~156をご参照ください。
実際のスペクトログラムを見ると下記の図のようになります。
わずかに見える黒い部分以外は白くなっており、アンチフォルマントによって音エネルギーが消失しているようです。
また、250~300Hzに鼻音フォルマントと呼ばれるものが存在しているようですが、「ボイスバーに接近しており見切るのには多少の慣れが必要」と参考文献の著者も述べています。
特徴があるようなないような鼻音ですが、参考文献の別ページに鼻音と有声破裂音が並んで書いてあるページがあります。
これを見るとこの2つがかなり似ているように見えませんか?
実際の国家試験の問題で見ると、第21回41問目の問題です。
これの1音目ですが、鼻音スタートになっていますが有声破裂音と取り違いそうになりませんか?(若干1200Hzと2200Hz前後に黒いものが見えますが・・・)
また、前回の記事で2音目と5音目が鼻音とも有声破裂音とも言えないと言いました。(国家試験本でもある「過去3年間」では鼻音として解説してありました)
完全に見分けるというのは難しいかもしれませんが、鼻音と有声破裂音は両方ともありうるくらいの認識で選択肢を絞ってもいいのかもしれません。
3.その他の子音の注意点
接近音は(w,j)は 別名「半母音」と呼ばれています。
その名の通り半分母音のような特徴があります。
例えば「ja」の構音をゆっくりしてみると、「い」から「あ」に向けて構音しているように聞こえませんか?
実際のサウンドスペクトログラムを見てみると、
/ia/(いあ)ほどではありませんが、/i/の後半から/a/に移っているように見えませんか?
「いあ」は2モーラに対して「や」は1モーラなので短いのは当然ですが、1モーラ内でホルマント遷移のようなものが見えたら接近音を疑っていいかと思います。
はじき音(r)は参考文献に「(はじく前は)完全な閉鎖区間ではなく、流音と同様のアンチフォルマントが存在している」のような記述がありましたが、私にはどのような特徴があるか判断がつきませんでした。
今回は以上になります。
子音については前回みた破裂音・摩擦音を中心に、今回の注意点に気を付けていただければ今までの国家試験は問題ないかと思います。
次回は母音について見ていきたいと思います。